科学技術論文の書き方
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学術論文とは

論文の三要素

論文には必須の三要素がある.
  1. 新規性 originality
  2. 有効性 availability
  3. 信頼性 reliablity

ゴールが予め分かっている実験・検討は,単なる学生実験にすぎない. 君たちがしているのは,たとえ学部卒業研究であろうとも,学術研究の端くれである. いくら端くれであっても学術の一端を担っているという気概で臨んでほしい. 学術論文ではこれら「新規性・有効性・信頼性」が絶対的な必須事項である. 伝統的な学術論文誌に掲載される原著論文 (フルペーパー)や伝統的な国際会議論文ではこれら三項目について全てを要求し評価する. ひとつでも欠けていれば採録されないのである.

比較的新しい学術論文誌では三項目のうち一つあるいは二つを要求し評価するものもある. この場合は投稿要領・要項に明記されているのが通例である. 明記されていなければ三項目必須となっていると考えてよい. なお,学術論文誌でもレター論文と呼ばれる区分では「速報性」を重視し, 新規性+有効性,あるいは新規性+信頼性,場合によっては新規性のみで採録することがある. 三項目を満たすための実験・検討・論文推敲は時間が掛かるものであるが, このようなレター論文は学術の進展にブレーキを掛けないための措置である.

いくら伝統的でない論文誌とかレター論文であってもいい加減な原稿で良いわけはない. 本サイトで述べるような論文としての最低限の体裁はぬかりなく整えなくてはならない. いくらすばらしい研究でも伝わってなんぼ,伝わらなくては査読者にとってはただのゴミなのである. 本サイトの隅々まで吟味し,論文原稿をブラシアップすることが採録への近道であるといえよう.

新規性 originality

いくら優れていても,だれかの二番煎じではいけない. いくら自分が一人で考えた,といっても,そのときにすでにだれかが 同じことをしていれば,それは最初ではない. 言い張っても単に先行研究をサーベイしていなかった者の愚行と見なされる. あの発明王エジソンでさえ電話の作成はしたものの, 電話の発明としてはベルに先を超されたのである. これが新規性である.

例えば...

1979年のノーベル生理学・医学賞は「コンピュータ断層撮影の開発」として, コーマック (Allan McLeod Cormack)とハウンズフィールド (Godfrey Hounsfield) に連名で与えられた. それから遡り 1917年にラドン (Johann Radon) は積分変換の一種であるラドン変換という再構成理論を発表した. コーマックがラドン変換に基づく CT (計算機断層法: computed tomography) の基礎理論を Journal of Applied Physics に発表したのは1963年と1964年である. またそれとは独立にハウンズフィールドは CT 装置の構成法を1967年に構想し,1972年に論文発表した. 学術上はコーマックが発明した CT 法に基づいてハウンズフィールドが CT 装置として実用化したということである. 理論的発明者と実用化という分類をすれば例外とはならず, CT 法の発明者はハウンズフィールドではなく,あくまでもコーマックであり,1917年のラドンの論文がその根源なのである. コーマックはラドンの論文を読んでいるが,ハウンズフィールドがコーマックの論文を読んでいたかどうかは定かではない. ラドン変換がなければ今日の CT 装置は無かったはずであるが, ノーベル財団がラドンの業績をどう評価したかはこれも定かではない.

ここで私が言いたいことは...省略する. 新規性を保証するのは,地道な文献検索・サーベイである. 日頃から論文を読もう.

先人が築いたピラミッドの上の石となるような,そして,後輩の石が その上に置かれるような「役に立つ」石となろうではないか. そのためには,どんな些細なことでもよいから,誰も成し得なかったことを示そう. 胸を張って,これは僕が世界で初めてやった,と言える研究をしよう. くり返すがどんな些細なことでもよい.

有効性 availability

その研究がどう役に立つのか,が有効性である. 直接に製品に直結する必要はない. 例えば「フェルマーの定理」が証明されたところで我々の生活に影響があるとは思えないだろう. しかし,その証明により整数論が進展し,堅牢な暗号体系が構成されれば個人情報や暗証番号の漏洩の心配が無くなるのだ. 明日の生活に関与しなくても,100年後・数百年後にはなんらかの形で我々の生活に関わってくるだろう.

卒業研究のレベルであれば実験が失敗しても良いのである. どのような方法でどのような条件で失敗したのか,という情報は後進が同じ間違いを繰り返さないための有効な情報なのである. ただし,これは博士論文・雑誌論文とするには少々問題がある.

同じ目的を持った研究でも, 「XXX の条件を与えれば,本方式はYYYの点で他の方式よりも優れている」, といえる研究に有効性である. XXXの条件が緩やかであればある程優れた研究と言えよう.

信頼性 reliablity

実験結果・検討結果を支えるものが信頼性である. 君の実験方法は論文に正しく書かれているか,理論的考察に間違い・穴は無いか, いくら有効な方法でも,信頼できなければ役に立たない. 本サイトでは特に,ことばでの表現の観点から論文の信頼性を高めるヒントが書かれている.

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