科学技術論文の書き方
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学術論文とは

論文の読者

繰り返し書くが,学術論文は「伝わってなんぼ」である. そのために大事なことのひとつとして「読者を想定した作文」がある. どのような専門性をどの程度持った読者が読むのか, ということをきちんと考えて執筆された文章はテンポ良く読み進めることができて心地よい. ここではそのような読者の想定という観点から学術論文を考える.

専門性

学術論文は,その道の専門家が読むものである. したがって,その道の専門家であれば常識中の常識であるような事柄は書く必要がないし, 冗長・無駄であるので書いてはいけない.

  • × (情報科学系論文の緒言の冒頭にて) 近年,コンピュータが発達し... (あまりに当たり前すきであくびが出る)
  • × (有機化学系論文の緒言の冒頭にて) 有機物は炭素を中心として組成され... (中学の教科書じゃあるまいし...)
一口にその道といっても広い道もあれば狭い道もあろう. 道の広さの尺度としては,大学の学科くらいに思っていれば良いと思う. それにしても上記例はその学部以外でも常識だろうが...

最近は特定の分野のみならず分野横断的な論文誌も多くなってきた. Interdiciplinary とか,学際的、とかいうあれである. このような論文誌では読者対象も自ずと広くなるだろう. 自分の分野の常識を読者に押し付けないようにしたい.

学位論文の読者

学生としては,学位取得の為に次のような論文,すなわち学位論文を書く必要がある.

  • 卒業論文 (卒論, B論)
  • 修士論文 (修論, M論)
  • 博士論文 (博論, D論)
忘れないでいただきたいのは,卒業論文も,学士 (◯×学) という学位のための立派な学位論文である. ただ,卒業論文を課さない大学も多いのは事実であるが,本当に嘆かわしい.その実態はただの専門学校だろう. ドイツ型の大学体系を取り入れた筈の日本でもフンボルト理念はもはや神話となったのだろうか...

これらの読者は誰であるか,なんの為に書くのかをよく考えよう. 学位取得のため,などというのは本末転倒である. 先生が読む,というのもそれは結果論であって,それが目的ではない. それらのうち,特に卒業論文,修士論文は,君たちの後輩が読むものである. 君たちが,4年生になったばかりの頃の知識を思い出してみよう.

  • その知識で,いま君が書こうとしている論文が理解できるか?
  • 同じモチベーション・問題意識が持てるだろうか?
  • なぜ,そのようなことをしたのか理解できるだろうか?
  • 同じ手順で,同じ実験を再現でき,同じ結果が出せるだろうか?
  • それらのための十分な情報を与えているだろうか?
  • 考察・検討が納得できるだろうか?

君たちの後輩は,君たちの研究を引き継いで,さらに発展させることがテーマとなるかもしれない. そのためには,(ソース)プログラムの所在地,コンパイル方法(場合によってはコンパイラの指定, オプションの指定を含めて),実行方法などの論文の本質とはならないような情報も, 付録として付加する必要が有るだろう.一年前の君は "-lm -lX11" を覚えていたか!? 必要十分な記述でそれが理解できれば理想であるが,現実にはそれができる学生は 希有である.学部三年次終了で理解できる様,「十二分」な情報を与えよう.

なお,博士論文は後輩も読むが,大学図書館のみならず国立国会図書館にも収蔵されるものである.

専門家でもピンキリ

さて,「専門家」の定義は,分野の問題のみならず論文の種類・レベルによっても異なる. ある国際論文誌の査読者用レポートフォームには, 「大学院生によって容易に追実験できるか」という評価項目がある. これを最初に見たときは「目から鱗」の思いであった. それができなければ,再現性のない,不確かなもの,役に立たないもの,ということになるのである. ここでは専門家のガイドラインとしては,
  • 卒業論文 : 学部 3 年修了程度
  • 修士論文 : 学部 3 年修了程度
  • 博士論文 : 修士学生程度
  • 地方大会,全国大会論文 : 修士学生程度
  • 国際会議論文,原著論文 : 修士学生程度
としておく. 工学が専門でない者が理解できる必要はないが, 卒論・修論では少なくとも学部 3 年終了くらいの知識で実装できるくらいに詳しく書く必要が有ろう. 「詳しく書く」ことと「易しく書く」ことは別次元の問題である. 易しく書いたために,情報量が欠落するようではいけない.

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